組手が苦手だったユーゴの挑戦①

組手が苦手だったユーゴの挑戦①

フルコンタクト空手は
格闘技における“フルコンタクト”というのは、『力をセーブせずに相手に技を当てる』ということ。当然、試合になれば、相手は全力で突き(パンチ)や蹴りを打ってくる。なので、フルコンタクト空手における組手は、試合でも練習でもそれなりに痛みを伴う。
子どもの中には、その痛みが苦手という子もいる。痛いのが好きという人はほとんどいないだろうが、特に苦手という子はいる。フルコンタクト空手を習う子だろうと、“痛いのが苦手”は否定すべきものではない。いろいろな人がいて当然だから。
私はそういう子でも空手を楽しめるようにしたいと思い、そういう子には型を勧め、“型の免許証”を作るなどして、できるだけ空手を楽しむ機会を整えるようにしている。

組手より型派のユーゴ
今まで、“型派”だった子がいる。現在、小学4年生のユーゴ。
ユーゴは、小学1年生時の9月に闘気塾西都に入門した。子どもながら整った顔立ちで、まさに“イケメン”な男の子。ユーゴは比較的器用な子で、割と速いペースで基本稽古や型を覚え、組手では蹴り技を得意とした。
しかし、ユーゴは体の線が細い子で、かつ、痛いのが苦手な子。上述したように、フルコンタクト空手は実際に技を当て合う競技だけに、体が細いと相手の力や体重をより強く感じる。結果、ユーゴは組手に苦手意識を持つことになった。

型の試合で活躍
その分、ユーゴは型を頑張った。持ち前の器用さを発揮し、機敏な動きも真剣な顔つきも表現できるようになった。初めての型試合は2023年2月。肝の太さも見せ、たくさんのライバルたちを退け、予選をトップで通過。決勝では、待機場所で散々待たされた上、自分が一番手ということもあって集中力を切らしてしまい、型の挙動を間違えてしまうというオチをつけてしまった。その結果、ユーゴの初めての試合は準優勝だった。
リベンジをするかのように臨んだ2023年10月の型試合では、同門決勝を制して優勝。すっかり“型上手”な子になった。

組手が苦手は相変わらず
しかし、相変わらず組手は苦手なようで、やってもライトスパー(軽い組手)だけという状態だった。時には後輩であるちびっ子たちを相手に受け役をやったり、技を教えていたりしていた。
一度、友好道場とともに自主開催の小さい練習試合大会をしたが、私はユーゴに自信をつけてもらおうと、あえてユーゴより小さい選手(ただ、空手歴はユーゴよりも長い)と練習試合をさせたことがあった。
結果、ユーゴは勝利し、私は『これで少しは組手を好きになってくれれば…』と思っていたが、その後もユーゴは組手が苦手なままだった。
私は『まぁユーゴは型を頑張っているし努力もしている。後輩の面倒見もいいし、ユーゴは今の調子で成長してくれればいい』そう思っていた。

苦手な組手試合への挑戦
2025年9月3日にユーゴが試合の申込書を持ってきた。2023年にユーゴが型で優勝したことがある大会が2025年10月にもあり、その試合の申込書だ。私はてっきり『お、今回も型で優勝を狙うか』と思った。
しかし、ユーゴがその申込書を私に渡した時、ユーゴのお母さんが「今回は組手にもエントリーします」と言った。
驚いた私はユーゴに「本当に出るの?本当に?」と何度も確認すると、ユーゴは「はい」と答えた。私は思わずユーゴを抱きしめてしまった。3年間もずっと組手が苦手だった子が、その苦手をはね返そうと挑戦を決意した。その感慨が走り、思わず抱きしめてしまったのだ。
お母さんは「私はいつか組手試合に出てくれると思っていました」と言い、嬉しそうだった。
しかしそれは、試合だけでなく練習でも苦手な組手を頑張らないといけないことを意味していた。
そこから、ユーゴのキツくてツラい組手練習が始まったのだ。   ~次回へ続く~

<今日の指導者の失言>新コーナー!私の失言を自戒のために取り上げます。

初めて組手の試合に挑戦することが決まめたユーゴに向かって失言

「おー!男やねー!」

私は『ついに組手に挑戦するか!頼もしい!』という気持ちで言ったが、女性でも組手に挑戦する人はたくさんいる。
普段、アップデートしているつもりでもつい言ってしまい、いかにジェンダーバイアスが根深いかが分かり、猛省した失言でした。