「練習に来ないからです」という激励

「練習に来ないからです」という激励

私は闘気塾西都のSちゃんに最近ようやく言えた言葉がある。それは、「練習に来ないからです」という言葉。
この言葉、文字にすると冷たい感じがするが、その時の私はSちゃんを信じて激励の言葉として言った。

マイペースSちゃん
その前に、Sちゃんについて。Sちゃんは現在小学6年生。Sちゃんの人となりについては、過去記事で触れているのでそちらをご覧いただきたいが、練習に来たり来なかったりが多く極めてマイペースな子。それでいて試合にはちょくちょくチャレンジするという、ある意味不思議な子だ。
そして、試合に負けたりするなど何らかの刺激があると、練習をがんばりだし、立て続けに試合に挑戦しだす、という“反脆弱性”な子でもある。
少し前、Sちゃんは練習にあまり来ていなかった。1ヶ月に1~2回来るか来ないかという程度。私はSちゃんの“反脆弱性”を思い出し、半ば脅しのような形でSちゃんのお母さんに「Sはこのままだと次の昇級審査受けられないかも」と連絡した(受けられないかもというのは事実)。そうするとSちゃんは…練習に来た。そんなマイペースで気分屋なSちゃんだ。

暑い中での試合
そんなSちゃんが6月22日のある大会に出場した。
昨今は6月といえど暑い。どの人も汗をダラダラとかいている。そんな中で白熱した試合を展開する各選手たちを尊敬せずにはいられない。
Sちゃんが出場するクラスはいつも出場者数が少ない。今回もSちゃん含めて3人で、2回勝てば優勝という組み合わせだ。
1回戦、相手は強い道場所属の選手。Sちゃんは持ち前のマイペース力で、さほど緊張しないタイプ。しかしこの日は若干緊張しるようで、私はほぐす意味で「大丈夫!Sは緊張せんかったら勝てるから(笑)」と励ます。そしていよいよ試合開始。
体格ではSちゃんが相手より優っていたものの、開始直後から相手の積極的な攻撃に押し込まれていくSちゃん。途中、Sちゃんの強い下段がヒット。セコンドをしていた私は『これに活路を見出すしかない』と懸命に下段を繰り返すようにSちゃんに向けて叫ぶ。それに応えて下段を打ち続けるSちゃん。
しかし、ラッシュタイムで相手の手数が上回り、結果、Sちゃんは1回戦敗退となった。相手を押し返す手数があれば勝てた可能性があっただけに、Sちゃんの5か月ぶりの試合はなんとも悔しい結果に終わった。

観客席に戻ったSちゃんはお母さんに「8月も試合に出る」と言った。残念ながら8月は県内での大会がないものの、そのやる気は素晴らしい(7月の試合は決まっているから、そっちをがんばろう)。さすが“反脆弱性のS”だ。
試合の感想を聴くとSちゃんは自分で「体力がない」と評し、そして私は冒頭の「練習に来ないからです(練習すれば勝てるよ)」と返した。
練習に来たり来なかったりするものの、試合にはちょこちょこ挑戦するSちゃんだけに、体力をつけて上を目指してほしい。

中学生になっても楽しんで
Sちゃんが6年生になって間もない頃、「中学生になったら空手はどうするの?」とSちゃんに聞いた。すると、はっきりと「続けます」とSちゃん。マイペースでもいいから、どうせならこのまま続けて黒帯までもらってほしい。私はそう願う。
でも、これからは先輩としてちびっ子たちのお手本になるから、練習にはちゃんと来るようにね。そしてこれからも闘気塾の空手を楽しんで。