元道場生のT
指導者によって、道場やチームに所属する人たちの姿や言葉、行動で最大級に嬉しい気持ちになる瞬間というのは違う(と思う)。
教え子が大会で勝った時や新しい技術を覚えてそれを使えるようになった時、準備や後片付けなどを積極的にするようになった時などなど、教え子の姿や行動で嬉しい気持ちになる瞬間は指導者によって違う(と思う)。
もちろんどの瞬間も嬉しいのだろうけど、“最大級に”嬉しいというのは人によって違う(と思う)。
2025年夏のある日。その日は午後から休みを取って色々な用事を済ませ、ジムに行って筋トレをした。17時くらいになり、筋トレを終えてジムを出ようとした時、誰かに声をかけられた。
「先生!」
見ると、元道場生で今は19歳の立派な社会人となったTだった。私は少しびっくりしながら「おー!ここで何しよっと?」と聞く。
「筋トレです」
ここはジム。そりゃそうだ。
少し会話をしたものの、まだ筋トレ中のTに悪いと思い、早々にジムを後にした。
思わず叶ったちょっとした夢
帰って休憩している時にふと『飯、誘ってみよう』と思い立った。実は私は、道場生が大きくなったらご飯や酒を驕るというのがちょっとした夢。叶えるチャンスと思い、誘ってみるとTは快諾してくれた。
私と2人だとTが気を遣うだろうと思い、Tと仲が良かったR(高3)も誘ってみると「行きます」と。こうして3人でご飯を食べることになった。
この時点ですでに私は最大級に嬉しい。なにせ夢が一つ叶ったから。それに、2人が道場に通っていたころの空手が嫌だったら誘いを断るだろうし、私を嫌っていたら誘いを断るだろう。しかし2人は二つ返事で快諾してくれたので、そうではないことが分かる。それも嬉しい。
19時に合流し、居酒屋に入る。社会人となったTは、私に酌をしてくれるなど、もう大人としての気遣いもできるようになっていた。※未成年の2人はもちろんソフトドリンク
話をするうちに、もう一つ最大級に嬉しいことがあった。
コーディネーショントレーニングの効果
2人は、高校ではラグビー部に所属していた。ラグビーでは2人とも、どのポジションでもこなせるオールラウンドプレーヤーとして、割と活躍していたようだった。
以前から部内では、“空手をやっていた人は不器用”というようなイメージがあったらしい。実際、ラグビー部には他の空手経験者も複数いたらしいのだが、2人いわく、他の空手経験者の仲間は不器用だったと。
そんな中、2人はどのポジションでもこなせる存在として、部内では重宝されたとのこと。
Rの同級生で同じラグビー部の子は、以前、空手をやっていて全国大会に出るような強い選手としてちょっと知られた子だった。体も大きく、部内で遊び程度に空手をやると2人は全く敵わなかったそうだ。しかし、ラグビーではその子よりTやRの方が優れていたという。
その違いについてTは、「僕たちは空手でコーディネーショントレーニングやっていたから」と述べた。
2人が道場にいた頃、道場生たちには空手とは別にコーディネーショントレーニングをさせていた(今もやっているが)。その目的は、“他競技に移っても活躍できる能力づくり”だ。
知っている人も多いが、コーディネーショントレーニングとは、身体能力を伸ばすトレーニングで、プレ・ゴールデンエイジ(5~8歳頃)やゴールデンエイジ(9~12歳頃)に行うと効果が現れやすいもの。
闘気塾でやっている具体例を挙げると、“動物走り”、“空手マリオネット、”ダブルドッヂボール“など。2人は道場にいた頃にそれらのトレーニングをやっていた。
そしてその結果、ラグビーではオールラウンドプレーヤーとして活躍したらしいのだ。これは、私にとってすごく嬉しいことだった。
闘気塾の存在意義
2人とはその他にもたくさん話をし、嬉しいことがたくさん。
Tが仕事を「いい感じです」と言い、がんばっていること。
以前は少し消極的な子だったRが、自分からアタックして長く付き合っている彼女がいること。
2人とも今でも格闘技が好きであること。などなど。
平日の夜に急な再会だったが、どれもこれも自分のことのように…いや、それ以上に嬉しいことばかりだった。
2人とは、「君たちの後輩(現在の道場生)が少し増えたよ。また道場に顔を出してやって」と言って散会した。
私は飲み過ぎて二日酔いになったことは言うまでもない。
私は、道場生が大会で優勝することよりも、道場を卒業したあとに何かで活躍することや、「闘気塾で空手をやっていてよかった」と思ってくれる方が、はるかに嬉しい。それこそが闘気塾の存在意義とすら思っている。
闘気塾でスポーツをすることの喜びを知り、人として成長し、生涯、スポーツを続ける。その姿を見聞きすることが私にとって最大級に嬉しいことだ。
しばらくしたら、またご飯をおごろう。
<今日の道場生の一言>
女子高校生指導員「この前、バドミントンの動画を観てたらコーディネーショントレーニングやってて、闘気塾でやってるトレーニングが遊びじゃないって初めて知りました(`・ω・´)シャキーン」
いやいやいやいや、あなたが小さい頃からちゃんと「コーディネーショントレーニングは遊びじゃないよ。トレーニングやで」と何回も言ってたがね( ;∀;)


