リング禍
2025年8月2日に行われたボクシングの興行で、それぞれ別の試合を行った2人の選手が急性硬膜下血腫で亡くなった。まずは深く哀悼の意を表したい。
また、同年5月に行われた興行でも、元世界王者の選手が試合後に急性硬膜下血腫で手術を受け、現在も意識が回復していないとのこと。さらに、2024年2月には前年12月に試合を行った選手が急性硬膜下血腫により亡くなった。
このようにボクシング界では痛ましいリング禍が相次いでいる。
長い試合時間
言わずもがな、ボクシングは頭部と腹部をパンチで攻撃し合う格闘技だ。その上、最長で3分×12ラウンドと試合時間が長い(最短は3分×4ラウンド)。キックボクシングで多いのは3分×3ラウンド、総合格闘技で多いのは5分×3ラウンド、長いところで5分×5ラウンドだ。他の格闘技に比して、ボクシングは試合時間が長いことが分かる。
あと、素人の私の感覚ではあるが、ボクシングのような大きなグローブを着用して被弾するパンチと、総合格闘技のようなオープンフィンガーグローブ(以下、OFG)で被弾するパンチとでは、質が違う。一見すると総合格闘技のOFGの方が薄いので危険な感じがするが、OFGで被弾するパンチは瞬間的なダメージ。一方、ボクシンググローブは“重い”という感じ。なんというか、『グワーン』と来て後に響く感じ。※素人の私見です。正しいかどうかは不明です。
これからしても、やはりボクシングは“頭部への負担が大きい上に、その負担に長時間晒される”という現実があるのだろう。
危険な“水抜き”
今回の死亡事故を受け、日本のボクシングを所管する機関は対策会議を開き、その中で「水抜き」対策を挙げたようだ。
水抜きとは、格闘技の試合前によく行われる体重減量法で、試合前日の計量の直前に体の水分を極限まで出し切り、規定の体重で計量をパスさせる。計量が終わったら体重を戻す、といった手法だ。もちろん私は万年アマチュアなので水抜きはやったことないのだが(試合前の通常減量は何度かやった)、水抜きはごく短時間で5㎏近く落とすため、体への負担が相当大きいようだ。水抜き中に意識がなくなることもあるくらい。※最近はあらゆる格闘家がYouTubeで水抜きの様子をアップしているので、興味がある人はご覧あれ。めっちゃキツそうな姿が観られる
この水抜きにより体に重度の負担をかけた後にさらに過酷な試合を行い、結果、リング禍となる。そのリング禍を防ぐために、協会は“当日体重が10%以上増加した選手は、次戦では階級上げをさせる”という対策を講じるようだ(次戦?今戦はやるってことか…)。
“体重を戻す”ことで生じる危険もある?
水抜きによる危険性がもう一つある(と思っている)。それは試合時の体重。
上記の通り水抜きは急激に体重を落として急激に戻す、という手法。多い人で10㎏近く体重を戻す人もいるようだ。ここが問題(と思っている)。体重を戻す量は“選手による”という点。
例えば、5㎏戻した選手と10㎏戻した選手がリング上で戦ったら、その体重差は5㎏。以前の投稿で、格闘技における体重差の危険性を述べた。その危険性が水抜き(と、その体重戻し)によって現出されるということ。
実際、たまに『え?これ、本当に同じ階級ですか?』と疑うくらい、明らかに体格差が違う試合を見かけることがある。長谷川穂積氏とウーゴ・ルイス氏との試合を観た時は目を疑ったものだ。
最近の試合で言えば、キックボクシングの与座優貴氏とペッタノン氏も体格差を感じた。そういった例はよく観られる。長谷川氏も与座氏も体格差をはね返して勝利しているのはさすがとしか言いようがないのだが、本来なら危険な組み合わせだろう。
リング禍が起きないことを願って
『それならいっそのこと当日計量にして、水抜きと体重戻しをやらないようにすれば』と思うこともある。しかし、通常減量は脂肪だけでなく筋肉までも落ちてしまう可能性があり、それはつまり選手たちが最高のパフォーマンスで試合ができなくなる可能性があるということでもある。
そういった事情もあり、前日計量とそれに伴う水抜きを簡単には規制できないのだろう(勝手な想像です)。
アジアの格闘技団体“ONE Championship”などでは、ハイドレーションテスト(尿比重検査)を導入している。ハイドレーションテストとは、簡単に言えば体内の水分量を測り過度な水抜きを抑制するテストだが、今後はこういった規制も広がるのではないだろうか。というか、広がってほしい。
私はボクシングを含む格闘技が好きだ。プロ・アマチュア問わず、格闘技で救われる人がたくさんいる。だからこそ可能な限り危険性を排除し、各格闘技が存続・発展するような取り組みを続けてほしいと思う。
以上、プロ格闘家でもないその辺のアマチュア格闘家のおっさんが、改めてリング禍について考えてみた。
これ以上、リング禍が起きないことを願って。


