マイペースで天然な可愛いM
現在、小学4年生の道場生M。彼が闘気塾に入門したのは小学1年生の3月、もうすぐ2年生になるという頃だ。入門のきっかけは友達のY。Yが先に空手を始めていて、Yに誘われる形でMも空手を始めた。
Mは入った時から今でもどこか飄々としているような子。稽古時も少しダラっとしているように見えて、でも実は本人はいたって真面目にやっている。自己主張はわりとするし、たまに真面目な顔して突拍子もないことを言って周りを笑わせる、Mはそんな子だ。
ある日などは、学校に嫌いな先生がいるとMが言うので理由を問うと「だってパワハラがすごいんですよ~」などと言ったり、道場の先輩の学年が中学3年生と聞いて「あ~一番大変な時期やねー( ´Д` )」などと言ったり。まぁ有り体に言えば、“マイペースで天然な可愛いヤツ”という感じの子。そのマイペース力を武器にして、試合に出れば割と結果を出すという、ちょっと不思議な子でもある。
M、初めての試合
Mの初めての試合は2年生の10月。Mは型の試合に出場した。
空手には様々な立ち方があるが、どの立ち方もキツい。立ち方は足腰の鍛錬なので当然だ。
Mはこの立ち方が苦手で、今でもなかなかできないくらい。そんな調子なので、私は『負けるかもしれないが、それも経験』と思い、出場させた。
で、実際に出場してみると、意外や意外、準優勝してしまった(優勝は友達のY)。この時、私はMのマイペース力を垣間見た気がした。
他の道場生を取り上げた記事でも書いたが、一般的に試合では緊張が邪魔して実力の半分も出せればいい方。しかし、マイペースな人というのは、緊張の度合いが低い(ように見える)。そのため、仮に実力がまだまだでも対戦相手が緊張で実力を出せていない状態だと勝ってしまうことがある。この時のMはそんな感じだった。
組手デビュー戦
そんなMの組手試合デビュー戦は、入門してから1年4か月ほど経った2024年7月だった。Mはここでもマイペース力を発揮し、一回戦、つまり初めての組手試合で技有りを取って勝利。決勝戦では延長までもつれ込んだものの、押し切って勝利。デビュー戦にして初優勝となった。
その半年後に行われた大会にも出場。二回戦目で敗退したものの、ここでもマイペース力を発揮し、3位決定戦で勝利して3位となった。
こんな感じで、真面目にやっているのかやっていないのか分からないMだが、大会に出るとそれなりの結果を残している。
とは言え、大会に出る時はいつも私が「Mも次の大会に出てみたら?」と勧めないと出ないのがMだ。
2025年9月28日に行われる大会にも、私がMに「久しぶりに出てみたら?」と誘い、あっさりと「いいですよ」とMが了承した形で出場した。
指導者、痛恨のミス
で、実際の試合の日。
相変わらず緊張の度合いが低い様子で、ウォーミングアップもあまりせずに仲間の応援などしていたM。私がMに「先輩に頼んでアップさせてもらって」と言うと、先輩である指導員Hの指示の下、ウォーミングアップを始めた。
ここで私の痛恨のミス。
指導員HがMにどんどんウォーミングアップをさせていたのだが、量が多い。Mはスタミナに課題があるのだが、指導員Hが嬉々としてMに指示し、Mにとっては多い量のアップをさせていたのだ。
私は止めようとしたのだが、Hのあまりの嬉々とした姿を見ると止められなかった。痛すぎるミス。指導者失格レベルのミス。
案の定、試合でMは動けず、一回戦敗退。しまった…完全に私のミス。Mに申し訳ないことをしてしまった。
大会会場から引き上げる際、MとMのお母さんと一緒になった。その際、お母さんが「アップしすぎましたね。Mはスタミナがないから…」と。や~ほんとに申し訳ない。
悔しさと申し訳なさがあった私は、次の練習時、Mに「1月の大会に出よう」と誘った。するとMは飄々と「出ますよ」と。あっさりとまた試合に出るというMが頼もしい。
次こそはMのマイペース力を発揮させて、表彰台に立たせよう。ウォーミングアップをさせ過ぎないように…。
リベンジ戦、まさかの…
Mのリベンジ戦は2026年1月18日。私は審判業務があるので選手たちのウォーミングアップには付き合えないが、事前に指導員に「アップさせすぎないように」と伝えていた。打ち合わせ通り、あまり動きすぎずにウォーミングアップを済ませたM。ついに出番。そして試合開始。
前回の悔しさを晴らすかのように、Mは開始直後から猛然と相手選手を攻める。強い突きから強い下段回し蹴りをハイペースで繰り返す。私は心の中で『…スタミナ大丈夫か…』と心配する。しかしそんな心の声がMに届くはずもなく、Mはさらにガンガン攻める。
ラスト20秒。ラッシュタイムだが、Mはスタミナが切れかかって失速。手が出ない。
「M!ここで勝負が決まるぞ!ここで押し切れ!」
私はそう叫び、Mは力を振り絞り、手を出す。そして試合終了。Mは見事に勝利した。
ヘトヘトのMだが、なんとか前回のリベンジは一つ果たした。しかし、二回戦が待っているので気は抜けない。体力を回復させるM。
しかしここでアクシデント。Mが嘔吐して倒れこんだのだ。おんぶして医務室に運ぶも、ぐったりするM。医者の先生や看護師さんが症状などを本人から聞こうとするも、うつろな返事しかしない。
到底、二回戦目ができるとは思えないため、Mのお母さんと話し合い、二回戦は棄権することに。せっかく一回戦を突破したので悔しさは残るが、仕方ない。Mのリベンジ戦は思わぬ形で終了となった。
そのまま帰宅したM。大会が終わった夜、お母さんにその後の様子を確認すると、夜にはちゃんと回復したようだった。
おそらく、スタミナに難があるMが、持っているもの以上の力を出して熱中症のような症状になってしまったのではないかと。いずれにせよ、回復してよかった。
飄々とした天然キャラでムードメーカーのM。これからもマイペースで練習し、マイペースに試合に出るのだろう。とりあえず、もうちょっとスタミナをつけておくれ。
でも、自分の限界を超えるほど、真っ白になるまで燃え尽きたM。あんなに飄々としていた彼が見せた「執念」に、指導者である私の方が教えられた気がする。

