運動していますか?
私は以前から、私の周りにいる大人たちの“運動習慣のなさ”が気になっている。そのために健康を害する人があまりに多いからだ。そしてそういった人たちが“なぜ運動をしないのか”の原因を考え、仮説を立てた。
その仮説とは、『若い頃にきつい運動を無理矢理やらされていた』『部活動などでスパルタ的指導をされていた』というもの。要は、子どもの頃の経験で運動に対してネガティブなイメージを持っているのではないかと。
実際に、少し古い論文(2009年)だがある論文には「成人期以前の経験スポーツ種目数と現在の身体活動量には関連があるとはいえない」が、「成人後の運動習慣に対して,成人期以前の運動経験は直接的な影響よりも運動好意度を介した間接的な影響のほうが強い.」となる。要は、“過去の運動経験は、現在の運動に対するイメージに影響を与える”らしい。
その仮説があるために、私は道場での指導は“まず体を動かす楽しさを覚えることから”と思っている。
その一環として闘気塾では、子どもたちにコーディネーショントレーニングをさせている。コーディネーショントレーニングとは運動能力を伸ばすためのトレーニングで、見学に来た保護者の方に渡す道場の説明書きには『目的は、①老齢期にも動く身体の基礎作り ②他競技にも対応できる運動神経と体力の形成』と記している。また、空手そのものもかなりのコーディネーショントレーニングになる。
で、その仮説と対策をもとに闘気塾で空手を習い、そして卒業していった元道場生たちが現在どうしているか、を少し紹介したい。
あ、この記事は“俺の指導すげ~だろ”、“俺のおかげだ感謝しろ”、という趣旨ではありませんよ。あくまでも、“楽しさを念頭に置いた指導を受けてきた人やコーディネーショントレーニングをやってきた人が現在どうなっているか”の紹介です。
社会人になった元道場生
昨年3月、高校を卒業した元道場生がふらっとやってきて、練習していった。話を聞くと、4月からは宮崎市内の企業に就職するとのこと(今現在はその企業に勤務している)。私にとっては、ふらっとやってきて練習する姿も嬉しかったし、県内の企業に就職が決まったことも嬉しかった。
その元道場生は、中学卒業まで闘気塾で空手をやり、高校生時にはラグビーをやった。ラグビーでは、オールラウンドプレーヤーとして重宝されたらしい。
また、社会人になってから運動はどうするのか気になって聞いてみると、社会人ラグビーをやるという。そして、私がインストラクターをしている格闘技ジムにも最近入会し、格闘技にも精を出している。
素晴らしい。子どもの頃にやった空手やラグビーで体を動かす楽しさを覚え、大人になっても継続する。なんと素晴らしいことか。こういう人は、年齢を重ねても何かしら運動をする習慣が続くだろうと思う。
野球クラブに入った元道場生たち
数年前、コロナが流行したころ、空手の練習場である体育館が閉鎖され、練習ができなくなった。
運動ができないというのは、子どもにとってはストレスが溜まる原因。結果、この時に結構な数の子どもたちが空手を辞めていった。その後、その子達は野球クラブに入ったことを聞いた(屋外グラウンドは使用できた)。
それからしばらくして、辞めた子どもの親御さんと話す機会があり、こんなことを言われた。
「野球を始めたんですけど、空手をやっていた子達みんながそれまで野球をやっていた子を押しのけていきなりレギュラーに抜擢されました」
これには驚かれた。
辞めた子達は空手の練習の際にコーディネーショントレーニングをしていたし、空手でもみんなで切磋琢磨して強度の高い組手練習をし、積極的に試合に出場して良い結果を残してきた子達だ。その結果、身体能力が向上し、他競技に移ってもすぐにレギュラーになるとは(押しのけられた子たちには気の毒だが…)。
その子たちは昨年4月から高校生になっている。親御さんに聞くとみんな高校でも野球を続けているという。これも運動の楽しさを覚えた人たちの良き例だと思う。
もっともっと価値観のアップデートを
私が子どもの頃の数十年前、どの部活でもそこそこスパルタ指導だった。顧問の許可がなければ水も飲めなかった(ハードな練習1時間に一回くらいの飲水だったか)。私が子どもの頃よりさらに前の時代はもっと激しかったと想像する。
それらの時代に比べると、現在は運動能力の向上を目指したものや競技を楽しむ指導になってきたと実感する。しかし、まだまだ指導者による暴力・暴言のニュースを耳目に入れる。
先述の論文は、終盤に次のように述べている。
「体力の向上や健康づくりに資する成人期以降における運動習慣の獲得のために,成人期以前に必要とされることは,運動に対する好意が高まるように運動を経験(体験)させることにあり,特にその運動経験とは,単なる量的な身体活動の確保だけではなく,運動が好きであるという感情をはぐくみながら,複数のスポーツ種目を体験させることであると考えられる.」
社会全体が武道やスポーツの価値観をアップデートし続け、人々の生活の質の向上に寄与できればと願う。
<今週の動画>
小学5年生から中学卒業まで在籍していた男の子が、社会人になって目覚めたものとは…

