「言うことを聞きなさい」は正しいのか

「言うことを聞きなさい」は正しいのか

世界中7,000万人(ウソ)の闘気塾日記読者の皆さんは、子どもの頃、親や先生の言うことをちゃんと聞く(親の意に従う)子どもでしたか?
私は…はるか昔の話なので記憶が薄いが、あまり聞かなかった気がする。手伝いなどもすることはしていたが、すっごい渋々だったし、何度も言われてやっと重い腰を上げるような感じだった。それに勉強はあまりせず遊びほうけてばかりだった。

「言うことを聞きなさい」って正しい?
昔は親や先生の言うことを聞く(意に従う)のが正しかった。いや、“言うことを聞く(意に従う)のが正しい”という価値観だった。今の価値観ではどうなのかは知らないが、私が道場生に対して思っていることは、“先生(私)の言うことが正しいなんて思わなくていい”ということ。

一例を挙げる。
先日9/28に行われた組手試合に、闘気塾西都の女子高校生指導員が出場した。
事前に対戦相手選手を見つけた指導員は、「無理!」を連発した。それもそのはずで、相手選手はすごく体格が大きい選手で、一回戦ではその体格を生かして相手選手を下がらせて勝利していた。
真正面に立つと不利になるので、私は『右に動いて攻撃を繰り返す』という作戦を立て、指導員に伝えた。
そして実際の試合。最初こそ作戦を遂行した指導員だったが、途中から真正面からの打ち合いに切り替えた。後で聞くと、「これならいけると思った」とのこと。
こうした場合は、私は選手の考えを尊重する。なぜなら、本人の考えやその時の状況によってそうしたはずだから。つまり、状況により私が間違っていることを言うこともあるし、本人の考えや価値観に沿わないことを言うこともあるからだ。試合に限らず、色々な場面でそうだと思っている。
ちなみに上記の指導員は、自らの判断で戦い方を切り替えた末、見事に勝利した。

そんな感じで、試合に限らず“先生(私)が正しいなんて思ってほしくない”、と考えている。そして、そうした考えから、「言うことを聞きなさい(先生の意に従いなさい)」とはあまり思っていない。

また、これにはもう一つの目的があり、それは、”指導者や先輩が間違っていたとき、悪いことをしたときには、子ども自らがそれを伝えやすいように”という思いもある。
昨今、子どもが性暴力にさらされる事件が発生している。当道場でこういったことが起きるとは思わないが、万が一、類似するようなことがあったときには、子ども自身が伝えやすいように普段から高圧的にはならないようにしている(実際にそういうときに子どもが伝えるのは難易度が高いだろうが)。

「言うことを聞くべきとき」がある
一方で、空手が子供達にとってスポーツであり格闘技である以上、指導者や先輩の言うことを聞くべきことがある。ルールや約束事、そして未然に事故を防ぐべきこと、などだ。
ルールや約束事が守られない状態で格闘技をすれば、自分が怪我をするし相手を怪我させてしまう。練習するべきときに走り回っていれば予期せぬ事故が起きてしまう。これは道場やチームを運営する指導者にとっては、最も避けなければならない事態だ。そのためにこれらに関わることは、“言うことを聞くように”注意することもある。
このようなルールや約束事は、何も指導者だけがやらなければならないことではない。道場に所属する大人や先輩たちが意見を出し合いながら定め、子どもたちに守らせるものだ。

4月のある練習日、男子高校生指導員が私に「子どもたち用のルールを決めたい」と言ってきた。内容としては、“練習が終わるまでサポーターを外さない”とか“自分の練習が終わっても他の人の練習が終わるまではボール遊びをしない”、“先生や先輩の話はきちんと聞く”などだ。黒帯高校生2人が協力し、子どもたちに説明するための資料を作成し、次の練習時に資料を渡した上で口頭でも説明していた(ページトップの画像)。なんと頼もしいことか。
このようにして、時には正しいやり方(“安全と円滑な運営のためにルールを作る”ということ)で言うことを聞かせることも必要。

その後、子どもたちはルールをきちんと守ろうとしている。時にはついつい破ってしまうこともあるが、その都度注意され、改善していっている。先輩たちが定めたルールが道場の安全を守り、円滑な道場運営に大きく寄与している。
現代の教育における自主性の尊重は、子どもに“自分の考え・価値観を大事にする”ことを教えてくれるだろう。一方で、それが誤った方向にいかないように道筋は示す必要があると考えている。

道場の子どもたちは、今回のように先輩にルールを教えてもらい、そして子どもたち自身も経験を重ねた末、自分で正しく判断ができるようになり、いずれ立派な先輩になっていくのだろう。
そしていつかは後輩を優しく教えてくれる存在になってくれる。私はその日が楽しみだ。

<今日の道場生の一言>
女子中学生の道場生が、顔を真っ赤にして私にYouTubeのアニメーションとそのキャラクター(男)を見せてきて…
「塾長、これ見てください。ちょーかっこよくないですか?!これです!この人です!かっこよくないですか?!(*´∀`*)」

私『…現実を見なさい(´・_・`)』

「現実です!これが現実なんですよ!かっこよくないですか?!(*´∀`*)」

私『……(大丈夫かな…)(´・_・`)』