兄妹で挙げた1勝

兄妹で挙げた1勝

ある優しき兄妹
2025年5月18日、宮崎県フルコンタクト交流大会が行われ、闘気塾からは4人が出場した。
4人はそれぞれ、優勝、準優勝、3位、4位と健闘した。この中に、それぞれ初めての1勝を挙げた兄妹がいる。S君とMちゃんだ。
S君は現在小学5年生、Mちゃんは2年生で、2人は2023年3月から闘気塾で空手をやっている。
2人とも優しい性格で、S君ははにかむような笑顔を向けてくれ、Mちゃんもいつもニコニコしている。しかし、2人とも優しい性格から、なかなか組手に強くなれないでいた。S君のその辺りの経緯は過去記事で書いているが、実はS君同様Mちゃんもなかなか組手に強くなれないでいたのだ。
S君の組手デビュー戦の様子は過去記事をご覧いただきたいが、Mちゃんのデビュー戦は2024年7月だった。
組手に強くなれないMちゃんを心配したが、いざ試合が始まってみると連打で攻めに攻めて、延長戦までいった。蹴りが出らず惜しくも敗退したが、Mちゃんの意外な一面を知ったデビュー戦だった。
そのようにして、2人ともいくつかの組手の試合に挑戦するものの勝つことができず、その度に涙を流した。

2人は型もがんばった。S君は姿勢が良く、かつ、水泳をやっていたためか脚力が強く、空手の難しい立ち方も比較的スムーズにできた。Mちゃんは、当初はそこまで型が上手というわけではなかったが、二つの型試合を通じて懸命に練習し、今では道場内の型評価会をすれば1位になるなど、立派な“型達者”になった。
しかし、型においても2人の努力は試合で結実することはなく、欲しい1勝がどうしても挙げられなかった。

Mちゃんの初戦
諦めない2人は、2025年5月に行われた宮崎県フルコンタクト交流大会(組手)にエントリーした。
試合当日、会場内に入った2人は、思ったよりリラックスした表情でストレッチやウォーミングアップをしていた。
Mちゃんの初戦、相手はMちゃんと同じくらいの体格の選手。審判の「始め!」がかかると同時に猛然と相手に打ちかかる両者。小さい体で、絵に描いたような乱打戦を繰り広げる両者だったが、判定は引き分け。
延長戦、またも最初から乱打戦になる両者。こうなると完全にスタミナ勝負となる。Mちゃんの手数が若干落ち、『まずい…』と思われたが、強い中段回し蹴りで相手を崩し、印象を持ち直す。その後も両者とも持てるスタミナを出し切り、判定を待つ。延長戦の判定はマスト判定(必ずどちらかに旗を上げる)だ。ところが、審判員らの勘違いなのかここでも延長という判定となる。審判団が協議した結果、再延長ということになった。どうやら、あまりの接戦に判定をつけにくかったようだ。
そして再延長。またも互角の乱打戦を繰り広げる両者だったが、最後の最後、Mちゃんの手が一瞬止まった。これが審判の印象の決め手となり、Mちゃんは惜敗となった。
判定が出た瞬間から泣き始めたMちゃんだったが、周りからは大きな拍手が送られた。

2人の初勝利
S君はワンマッチとなった。相手はS君よりはるかに体の大きい選手。私は内心『Sがビビってなければいいが…』と思っていた。
試合開始。相手の圧に一瞬戸惑ったようなS君だったが、その後は私の心配を裏切るかのように相手を攻め立てていく。そのS君の鬼気迫る表情に気圧されたのか、相手選手はあまり手数が出ない。
結局そのままS君が相手を攻め切り、勝利。嬉しいS君の初勝利に思わず床を叩いて喜ぶ私。自陣に戻るとみんなに祝福されるS君は満面の笑みであった。
全員の試合が終わり、一段落したと思っていたところ。「M選手、3位決定戦があります。至急コートに来てください」というアナウンスが。慌ててMちゃんに準備を促してコートに送り出す。
心構えができていない周囲をよそに、Mちゃんはスイッチを入れ、一回戦の悔しさをぶつけるように相手に打ちかかっていく。
そして結局そのまま相手を押し切り、勝利。3位が決定した。降って湧いたような試合で勝利し、私を含む周りは驚き、そして喜ぶ。初勝利を挙げたMちゃんも当然満面の笑みだ。
その後、2人は一緒に表彰台に上って記念撮影をして会場を後にした。

これからも空手を楽しんで
初勝利を挙げるタイミングが一緒とは、仲の良い2人らしい。
S君はこれからも挑戦を続け、Mちゃんに“お兄ちゃんの背中”を見せてくれるだろう。Mちゃんはそのお兄ちゃんの後を追いかけて、これからも空手をがんばってくれるはず。
そして2人はこれからも微笑ましい姿と笑顔で、道場の仲間と闘気塾を盛り上げてくれるだろう。
精一杯、闘気塾の空手を楽しんでほしい。