才能溢れるA
闘気塾西都には、現在小学3年生になる男の子Aがいる。Aは小学生になる直前から空手を始めた。
当初から真面目で物覚えもよく、そして運動神経もよかった。そのため、型もすぐ覚え、組手も強かった。
他の道場生のある保護者さんは、Aを評して「あの子は頑張れば全国レベルになる」と言った。それほどの素質を持っている道場生だ。
そんなAだが、つい最近まで試合に出ては一回戦敗退、よくて二回戦敗退という結果ばかりだった。
と、ここで以前の闘気塾日記の記事のおさらいをしたい。その内容とは「試合に強くなる条件」。
子供が試合に強くなるには大きく3つほどの条件がある。それは、
- 子供自身の試合に対するモチベーション(努力)
- 保護者の全面的な協力
- (できれば道場内の)ライバルの存在
この3つだ(The 私見です!)。細かくは以前の記事を参照していただきたいが、この3つのいずれかがあると試合に強くなりやすい。3つとも持ち合わせれば、強くなる速度ははるかに増す。
この条件にAを当てはめてみると、1と2はある。Aは試合に対するモチベーションが高く、試合に対して淡泊な道場生が多い中、Aは常に試合に挑戦し続けている。保護者の協力面においても、Aの父親は一緒に空手をやり、居残り練習に付き合い、共に汗を流している。母親もよく練習を見に来てAを励ましている。
このように、Aはモチベーションと保護者の協力という条件を持ち合わせている。しかし、ライバルの存在がなかった。同じ道場に同世代の仲間はいるものの、Aが練習では強すぎるがゆえに、仲間から組手を断られる状態であった。
結果、どうなるかというと、負けるはずがない試合相手の上段蹴りをもらってしまい、敗北する。緊張しすぎてしまい、自分の動きができなくて敗北する。今までのAはそんな状態であった。
コンペティションクラス
試合に対するモチベーションが高いAに、なんとかいい結果を出してほしいと考えた私は、2024年2月から同じ市内にある他の道場と合同で不定期の月曜日にコンペティションクラスをすることにした。その名の通り、試合をがんばりたい選手たちのためのクラスだ。そして、そのコンペティションクラスに『Aと同世代の子が来てくれたら…』という密かな思いがあった。
結果…いた。Aと同学年・同体格の男の子R君と女の子Lちゃんがコンペティションクラスに来てくれたのだ。そこから、Aは新たに練習仲間・ライバル関係となった2人とコンペティションクラスで切磋琢磨しはじめた。
コンペティションクラスは試合に向けてのクラス。当然、練習内容は実戦形式でキツい内容。しかし3人は弱音を一切吐かず、課題に取り組み、練習に励んだ。練習試合も重ね、少しでも“場慣れ”させ、本番で緊張しすぎないような取り組みも行った。
コンペティションクラスを始めてAは2回試合に臨んだが、いい結果とはならなかった。しかし、内容は悪くなく、それまでと比べたら着実に強くなっているのが分かった。
初優勝
そして2024年11月3日、宮崎県武道館で全九州フルコンタクト空手道選手権大会が行われ、3人とも出場した。コンペティションクラスの成果が試される試合だ。一回戦直前、Aの様子を見ると、若干緊張しているものの、今までのAとはまったく違うくらい落ち着いていた。
そして試合開始。一回戦目は、自ら強化に取り組んできた下段回し蹴りで技有り2つを得て勝利した。決勝戦は、ライバルR君を一回戦で破った相手。体格もAより大きく、油断はできない。しかしここでもコンペティションクラスで強化してきた下半身が生き、Aは大きい相手に一歩も下がらない。途中ヒヤリとした場面があったものの、Aは終始攻め続け、判定勝利を得た。なんとAは意外にもこれが初優勝だ。
その日の夜、一緒に空手に励んでいるAのお父さんから喜びのLINEが届いた。コンペティションクラスをやって本当に良かった。
翌日、A宅は優勝祝いのお寿司を食べに行ったらしく、次の練習時に私が「お寿司美味しかった?」とAに聞くとAは、「あんまり…ご飯が硬かった…」と笑。Aらしい答えだこと。
Aにはこれからも空手を好きでいてほしい、楽しんでほしいと願うばかり。