塩試合はなぜ起きるのか

塩試合はなぜ起きるのか

徳川家康さんが、ある時家臣たちとおいしい食べ物について話していたそうな。話を振られた側室のお梶の方(英勝院)は、おいしい食べ物を聞かれ「塩です」と答えた。そしてまずい食べ物を聞かれた際も「塩です」と答えた。
適度に加えればおいしい調味料、加えすぎれば塩味が強すぎて食べられない。そういう意味だそうで。
う~ん。当意即妙な答えで、家康公もさぞ感心しただろう。

塩試合とは
格闘技の試合では、たまに“塩試合”と呼ばれるものが発生する。どんな試合かというと、対戦している双方ともに積極性や決め手を欠き、周りから見ると盛り上がる要素がない試合のこと。
直近の大きなイベントでいうと、RIZIN.46で塩試合があり、試合中にレフリーから注意が与えられ、観客からはブーイングの嵐が巻き起こるという試合だった。
過去の有名な“塩試合”でいうと、ボブ・サップvs大砂嵐戦。これは私も記憶に残っているくらい、ものすごい塩試合だった。
では、 “なぜ塩試合が発生するのか”というのを、文字数稼g…違う…格闘技理解のために、大した格闘家でもない私が考察してみる。

パターン①:相手の実力や狙いが分かるがゆえのディフェンシブな状態のとき
まず私の経験から。私の経験なんてたかが知れているが、柔術の練習でもたまに塩試合ならぬ“塩スパー”をやらかすことがある。
塩スパーが発生するときは、大体“相手のやりたいこと”が分かっていて、それをされないようにディフェンシブな状態になっている。そして、そのディフェンシブな状態を崩されることに恐怖感を感じ、攻めに転じることができず、結果、動きの少ないスパーになってしまう。
このようなケースは、双方の実力がおおよそ拮抗しているときに発生しがちに思う。

パターン②:相手が何をしてくるか分からず、守りに入ってしまうとき
一発がある相手やトリッキーな相手のときに起こりやすいパターン。先日のRIZIN.46であった塩試合もこれかと推察する。
予測していない状態で強烈な一発をもらうのはリスクがあるために、攻めることができず塩試合になると思われるパターン。

パターン③:スタミナ切れ
上述のボブ・サップvs大砂嵐戦がこれ。巨体の選手同士によくみられるパターンだが、スタミナが切れると何もできなくなるために起こる。これは…本当に塩です。上記の①②はまだ試合が動く可能性があると思うが、このスタミナ切れによる塩試合は本当に何もない。塩どころか無味無臭と言ってもよいのではないかと。

寝技が多い試合は?
と、おおよそこの3パターンがあるのではないかと考察。
あ、あと補足すると、MMA(総合格闘技)の試合で寝技の展開ばかりの試合がたまにある。寝技の経験がない人から見ると、寝技主体の試合も塩試合に映るかもしれないが、あれは塩試合ではありません。
寝技は高度な技術が必要とされ、“ただ組み合っているだけ”、“ただゴロゴロしているだけ”ではなく、動きがなさそうに見えて実は細かい技術を使いながら攻防を繰り広げている。コンマ数秒の動き、数センチ単位の手足の置き位置、一瞬で相手の裏をかくフェイント、などなど、実に細かい技術を使っている。
如何せん、やったことある人にしか分からないというのが寝技。打撃は華があって攻防が分かりやすいが、寝技はちょっと地味で分かりにくい。しかし、寝技の多い試合は決して塩試合ではないので、ぜひ注目してみてください。
あ、偉そうに言ってますが、私の技術は全っ然大したことないですすみません。

塩試合もいいかも
そんな感じで、一口に塩試合と言っても様々。塩試合は選手たちのレベルや勝利への執念の現れでもあるし、塩試合に見えても細かい攻防をしている試合もある。
適度な塩試合は、いい試合である証拠かもしれない。

ちなみに、フルコンタクト空手は動きが多い空手なので、塩試合というのは起きません。