ある中学女子道場生に教えられたこと

ある中学女子道場生に教えられたこと

地元の祭りでの演武
さる7月6日、闘気塾西都の地元で地区の祭りがあり、演武のお声をいただき出演した。4才と6才の女児道場生の板割りから始まり、キックでの風船割り、中学生の型、バット折りなどを披露し、普段お世話になっている地元の方々へ良い活動報告ができた。

演武の前、上記の4才と6才の女の子たちにうさぎ耳のカチューシャを着けて演武してもらおうと思い、準備してきた。実際に着けてもらうと周りの道場生たちも「かわいい」という反応で、『これを着けて舞台に立つと、観ているおじいちゃんおばあちゃん方が微笑んでくれるだろう』と思った。
すると、ある中学1年の女子道場生が「先生の趣味でそういうのやめたほうがいいです。嫌がる人もいます」と猛反対し、カチューシャは取りやめた。

朝ポキ
話は急に変わるが、私は朝に家事をする際や通勤途中の車の中で、朝日新聞ポッドキャスト(以下、「朝ポキ」)をよく聴く。朝ポキは、新聞記事や時事問題の深掘り・解説などをしてくれ、不勉強な私の知識・価値観のアップデートに非常に寄与してくれている。
そしてこの朝ポキではジェンダー問題もよく取り上げられ、いち指導者として老若男女問わず人と接する機会がある私も、多少の関心を持ってこの問題を勉強させてもらっている。なので、改めて本などでジェンダー問題を勉強したことはなかったものの、少しは頭に入っていると思っていた。
そこで上記のカチューシャの話に戻るわけだが、おそらく中学女子道場生はジェンダーバイアスのことを指して「やめた方がいい」と言ってきたものと考える。つまり、『“小さい女の子”がこれを着けたらかわいいだろう』というバイアスで考え、それを指導者から言われるという道場生からすれば断れない状況でカチューシャを着けさせられる。それを「やめなさい」と止めてくれたのだと思う。

もしあのまま着けさせていたら、その女児道場生たちが将来『あの時はカチューシャを着けさせられて苦痛だった』とトラウマになるような傷を心に負わせたかもしれない。そう考えると、止めてくれたことに感謝するとともに、まだまだ意識をアップデートできていないことを反省した。そして慌ててジェンダー問題に関する本を購入して勉強している。

反省を心に刻む
ジェンダー問題は根が深く、非常に複雑で難しい問題。それには、人間が培ってきた(善悪両面の)歴史と文化、慣習が大きく関わっており、それはつまり簡単には「これが正しい」という答えが出ないことを意味している。
実際、普段朝ポキでジェンダー問題を耳にしている私が、『良かれ』と思って平然とバイアスがかかった勝手な考えを押し付けようとしていた。それほどまでに人々に根付いているもの。だからこそ、意識をアップデートし続けなければ気付けないし、今後も独りよがりな考えを道場生たちに押し付けてしまうかもしれない。

教師や部活動の顧問による、同性・異性を問わない性加害を最近特に目にする。教え子に性加害を犯すという趣味は私にはないと断言できる。
しかし、少しでも間違った接し方はすべきではないと考えているし、絶対そうはなるまいという意識を自らに課すために、これを記した。