ダラばな:君はノロマじゃない

ダラばな:君はノロマじゃない

稽古後にレクリエーションをしようとしていた時、ある道場生が「僕はノロマだから」と言った。
誰かに「ノロマ」と言われたことがあるのかと、とても心が痛い思いをした。

その子はのんびり屋でマイペース。
型を覚えるのも、仲間たちより少し時間がかかる。脚の筋肉がまだ発達していないのか、バランスを取るのがまだ苦手なのか、よく転ぶ。
でも、その子はまだ空手を始めたばかりの頃から、自分から積極的に組手稽古をしていたし、何にでもチャレンジするような頼もしい子。
なにより、少し時間はかかるかもしれないが覚えることはきちんとできるし、よく転ぶかもしれないが走ることはできる。
そして、どんな練習も一生懸命に楽しめる才能がある。
全部“個性”だと思っている。それぞれ得意なことがあれば苦手なこともある。苦手なことでも続けることで得意になることもある。全部、個性。

著作家で経営コンサルタントの山口周氏は、その著作「武器になる哲学」の”マタイ効果”の項で、以下のように記述した。

『「4月生まれの子は成績もいいしスポーツもできる」という、発生学から考えればとても不自然な事実は、私たちに、人を育てるに当たって最初期のパフォーマンスの際をあまり意識せず、もう少し長い眼で人の可能性と成長を考えてあげる事が必要だ、ということを教えてくれるように思います』

“型を覚えるのに100回の練習が必要なら100回練習すればいいし、先生は何回でも教える”
“無理はしなくてもいいけど、続ければいつかはできるようになる。君が自分自身を諦めないうちは、先生が君を諦めることはない”
これからその子にはそんな風に伝えていきたい。

君はノロマじゃない。