ある慎重派の子とマイペースな子
いや~反省反省。私は子供の可能性を信じていなかったかもしれない。
当道場に、ある小学5年生の男子道場生Y君がいる。Y君は昨年の9月から空手を始めた。
当初、お母さんがY君を「石橋を叩いて叩いて、それでも渡らないような子」と評していて、それくらい慎重でちょっと内気な子であった。
入会してからも慎重・内気ぶりを発揮して、昇級審査を受けるのもとても躊躇し、私からお母さんに連絡して励ましてもらって、なんとか受検させた(無事に昇級)。
私がY君を見ていて、何度か「お?」と思ったことがある。
一つは、ある小さい組手の大会の余興で相撲が行われたとき。Y君は組手には出なかったものの、相撲には出場した。
小さい大会の余興とはいえ、大勢の人たちが一つの土俵の上に立つ2人に注目する。それなりに緊張はするはずである。
だがY君は、特にガチガチになる様子もなく、頼もしい面持ちで土俵に向かい、自分から積極的に前に出て、ついには優勝してしまった。
初めての舞台で堂々と戦って自分の力を出し切るのは、そうそうできることではないはず。
『この子はもしかして…』と何かを感じた瞬間だった。
別の女子道場生、Sちゃん。現在小学4年生。
Sちゃんはマイペースな女の子で、気分が乗らないと練習も休む。練習中でも体育館の外で遊ぶ友達の姿を見れば帰る。
型の練習も、脚の筋肉を使ってキツいのであまり好きではないらしく、型練習というと『え~…』というような顔をする。そんな超絶マイペースな子。
あまりにマイペースなので、お母さんも『なんとかやりがいをもって真剣にやってほしい』と思っていた。
初めての試合
この2人が6月に初めての組手の試合に出場した。4月には出場が決まったので、早々に試合に向けて練習を開始した。
Y君は自分から強度の高い練習を積極的に行った。途中、練習仲間の上段回し蹴りが顔にヒットする場面もあったが、くじけずそのまま練習を続けた。
Sちゃんも、段々と練習強度が高まるにつれてボディに強い攻撃を受けて泣いたりしたこともあったが、やる時は懸命に練習し、ある時などは突きがとても強くなっていて私が驚くほどであった。
試合の結果は、Y君は初戦敗退であったが、試合開始直前には「っっしゃ!」とやる気を出し、そして強い相手に気持ちで負けず、最後まで打ち合っていた。
そしてSちゃんは、試合でもマイペースを発揮し、試合直前になっても余裕しゃくしゃくの表情。結果…優勝してしまう。
信じましょう
それぞれの結果はともかく、私は反省し、また一つ子供に勉強させてもらった。
Y君はとても慎重派、Sちゃんは超絶マイペース。2人が道場に来た頃は、『軽い組手でもミット打ちでもいいから、自分なりに楽しんでくれれば』と思っていた。
ところが、試合に向けて懸命に練習し、痛さやツラさにもめげずに強くなり、試合でも精一杯の自分の力を出し切って立派に戦っていた。
そこに結果は関係ない。勝とうが負けようが、練習で努力をすることを学び、試合で緊張感を味わい、喜びや悔しさを学ぶ。それがいつしか成長の糧になる。
以前の記事にも書いたが、子供はいつどのように成長するか分からない。そう認識していたはずだが、私は知らず知らずのうちに子供の可能性を見切っていた。
反省。子供の可能性を信じて、ともに成長していこう。押忍