初めての型の試合
2月の話だが、型の試合に当道場から4名が出場した。うち、2名が型の試合は初めて。
型であれ組手であれ、試合に挑戦すると子供は大きく成長する。それも、試合前と試合後ではまったく違うくらいに。
試合を通して子供が成長するプロセスは、大きく分けて3つある。1つは試合に向けての練習と、1つは試合当日。そしてもう1つは試合後。
今回の型の試合を例に書き出してみる。
成長のプロセス
試合に向けての練習開始時、型の試合が初めての出場者の1人(小2)は、おそらく普段の練習と変わらないものと捉えていたようで、のんびりとした様子であった。
私がいつもと違う感じで”試合まで時間がないこと”などを伝えると、少し真剣みが増しはじめた。
試合に向けての練習を開始し、立ち方や手の位置、運足の仕方、突きの勢いの出し方などを細かく作り直す。
空手の立ち方はほとんどがキツく、小学校低学年生にはつらい練習。
その道場生も、途中キツそうな顔を何度かするが諦めずに何度も繰り返す(もちろん、途中に休憩をはさむ)。
ある日の練習では、試合のプレッシャーから「練習できない」と泣き出したりもした。
こういったハードルを一つ一つ乗り越えながら練習を何日も行い、一つの型を繰り返し繰り返しやりながら、重厚な型を作りあげていく。
そして試合当日。
会場では他の道場の選手たちが真剣な表情で黙々と練習を重ね、指導者の先生たちや保護者の人たちが周りを囲んでいる。
その小2の道場生は会場の雰囲気と試合のプレッシャーで、お母さんに抱きついてしばらく「試合に出ない」と泣きじゃくっていた。
最終的にはなんとか持ち直して、試合に向かい出番を待つ。
試合が始まると会場は静粛な場となり、その中で自分の出番を待つ。
いざ自分の出番が始まると、やはりあまりの緊張で練習したことの半分も出せていない。
そんな中でも、真ん中くらいの順位は獲得し、やりきった満足感もあったようだった。
試合後はどうか。
試合後の稽古日、小2の道場生は稽古開始前に私のところに来て「新しい型をやりたい」と言い出した。どうやら、家や児童クラブなどでも型をやりだすくらいに熱が入ったようだ。
実際に新しい型を教えると、稽古開始前にも関わらずしっかりと集中して覚えも早く、動きもすぐに上手にできていた。
勝手に成長してくれる
まとめると、①試合までの練習期間では、キツい練習も何度も繰り返したりプレッシャーに耐えながら忍耐力を育てる、②試合当日は、経験したことのない緊張感の中、大舞台で自分の姿を披露して胆力を育て、やり切った達成感を得る。③そして、試合後にはそれらが自信につながり、努力の大切さを学ぶ。
このように、試合経験を経ると子供は大きく成長する。今回は型の試合の例であるが、組手の試合もまた大きく成長させてくれる。
別のある道場生は、あまり怒らない私が怒ったことがあるほど練習中も自由奔放な子だったが、初めての試合を経験した後は真面目に練習に取り組むようになった。
試合に負けはしたものの、デビュー戦を立派にやり遂げたことで少し自信がついたのだ。
子供達が本当にその競技を好きになれば、指導者や保護者が口うるさく言わなくても積極的に競技に関わり、その経験を通して自分で成長してくれる。
今回初めて型の試合に挑戦した上記の道場生に試合に出てどうだったか尋ねると、「楽しかった」と答えた。
高いハードルを一つ乗り越えて、また大きく成長してくれた。
好きにさせられるか、楽しませられるかどうかが指導者の役割であろう。
ま、それがなかなか至難の業なのだが…。押忍。
<今日の道場生の一言>
中学生になった男子道場生が、それまではしゃべり好きだったのに、最近おとなしくなったので「元気ないけどどうした?」と聞かれた時の一言
「そういうお年頃です(*’ω’*)」
あ~君にも思春期というものがあったのね。



